過去の記憶

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身を縮める私の前から長身の男性が近づいてくるのがわかったが、私はまだわからないと言う表情で遠くを見るふりをした。     『留衣さん?』     目の前まできた男性が私に声をかけた。   その男性を見て、26歳にして初めての一目惚れだったと気付いたのはもう少し後の事。   色白に切れ長の目で整った顔立ち、長身でジャケットが似合う男性だった。まさに私の理想像。     私はその容姿に見とれて言葉が出なかった。     『留衣さん?』   その男性が私を覗き込むと私は我に返ることができた。     『はじめまして!伊藤留衣と申します!』     勢い余って大きな声で自己紹介した私を見て彼はクスッと笑みをこぼした。
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