過去の記憶

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『はじめまして、田辺和也と申します』   丁寧に頭を下げた彼を見て更に見惚れる始末。     無言な私を見て彼が『カフェでも行きませんか?』と声を掛けた。     私は彼の言葉に頭を上下に振り、彼を私の車に案内した。     彼が車に乗り込むと密室に二人きりという緊張からかピリッとした空気になり、少しだけカーステレオのボリュームを大きくした。     *********     『え?じゃぁタメ?』     段々打ち解けてきた私。     『へ~留衣さんって大人っぽく見えますね』   上手な相づちを打つ彼。     『なんか、不思議と話が盛り上がるね。時間忘れそう』   『そうだね~!あ、もうこんな時間だ…初めて会ったのに女の子をこんな遅くまで引き止めておくのは気が引けるなぁ』     その言葉に少し淋しさを感じる。     『来週の日曜日予定ある?』     淋しさを見透かされたような言葉に胸が踊る。     『いや、特にないよ』   『留衣が良かったら遊ぼ!』     こうして私たちは次の約束を重ねていった。
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