ハント1

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彼にあるのは、衣服とザック、最低限の備品、使い古しの剣と老朽化した弓矢だけである。 現在それが、彼の全財産なのだ。 「おっと!  この先はロウムの縄張りか…」 ロウムは狼に似た獣の事である。 群れで行動し、獲物を襲う肉食獣。 但し、この辺りのロウムは、テリトリーに入らない人間は襲わない。 それは暗黙のルールとなっている。 人間とロウムの住み分けだ。 この先では、獲物が存在し、採取も可能と考えられる。 だが、村の掟で入ることはできない。 現在のダリルは、村から出た旅人だ。 しかしロウム達にとっては、村人かそうでないかは関係ない。 ただ、村人を示す匂いで人を判別してはいるようだ。 村人が禁を犯すと、ロウムは報復として村を襲撃する。 村人以外の侵入では報復しないが… だが、ダリルは村を出たばかりである。 ダリルには分からないが、村人特有の匂いがする筈だ。 (この先には、行けないな) そう考えて迂回するのだった。
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