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彼にあるのは、衣服とザック、最低限の備品、使い古しの剣と老朽化した弓矢だけである。
現在それが、彼の全財産なのだ。
「おっと!
この先はロウムの縄張りか…」
ロウムは狼に似た獣の事である。
群れで行動し、獲物を襲う肉食獣。
但し、この辺りのロウムは、テリトリーに入らない人間は襲わない。
それは暗黙のルールとなっている。
人間とロウムの住み分けだ。
この先では、獲物が存在し、採取も可能と考えられる。
だが、村の掟で入ることはできない。
現在のダリルは、村から出た旅人だ。
しかしロウム達にとっては、村人かそうでないかは関係ない。
ただ、村人を示す匂いで人を判別してはいるようだ。
村人が禁を犯すと、ロウムは報復として村を襲撃する。
村人以外の侵入では報復しないが…
だが、ダリルは村を出たばかりである。
ダリルには分からないが、村人特有の匂いがする筈だ。
(この先には、行けないな)
そう考えて迂回するのだった。
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