始まり

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お母さんたちの生まれ故郷。 それは故にあたしたちの生まれ故郷でもある。 お父さん達が亡くなったあと、家賃が払えなかったのと思い出が辛くて、あたしたちは引っ越してしまった。 美奈は小学校を転校、あたしは高校を中退。 どこか親戚にご厄介になる方が楽だった。 けれど。 かわいそうだとか、ひどいとか、果てはあたしたちが血が繋がっていないことが哀れだとか言われ、それを口々に言ってくる親戚が煩わしくて、あたしは美奈の手を引いてこの町を出たのだ。 うちにおいで。 そう言ってくれた親戚もいた。 けれど憐れみの目で見られながら過ごすのは嫌だった。 だからあたしたちにとっても、思い出の場所であり、ほろ苦さもある。  
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