29人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の瞳はまるで海だった。
全てを包み込むような、慈愛に満ちた優しい瞳。
その瞳が私を真っ直ぐに見つめて離さない。
そんな瞳で見ないでよ。
あなたなんて今知り合ったばかりなのに、どうしてこんなに安心するの。
どうして話したくなるの。
私は今まで人に弱音を打ち明けたことがなかった。
弱い部分はひたすら嘘で固めて、隠した。
見つからないように
見つからないように、と。
弱い人間だと知られるとみんなが離れていってしまいそうで。
母にも捨てられそうで。
それが怖くて言えなかった。
でもこの人なら。
この人なら大丈夫な気がした。
受け止めてくれそうな気がした。
だから私は――――
「……嫌なの」
最初のコメントを投稿しよう!