PIERROT

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「本当は私、美術の専門学校に行きたいの」 昔から絵を書くのが好きだった。 好きになったきっかけはお父さんの絵はがき。 私の家は父、母、私の三人家族。 お父さんは建設関係の仕事をしていて、たまに出張で1ヶ月ぐらい海外に行ったりしていた。 その時に向こうの景色や私たちを書いた絵はがきが送られてきて、私とお母さんはいつもそれを楽しみにしていた。 お父さんは絵が上手かった。 だから私も「お父さんみたいに」と絵を書き始めたんだ。 私が絵を書くとお母さんはとても喜んでくれて、嬉しくたくさん書いたのを覚えてる。 でもある日。 お父さんは出張先から帰って来なくなった。 電話も何回もしたし、手紙も毎日送ったのに何にもお父さんから連絡はなかった。 近所の人は「きっと逃げられたのよ」とお母さんを笑うようになった。 その頃からだろうか。 お母さんがおかしくなったのは。
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