えぴそーど「その0」

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 ―――……楽屋のドア開けたら、やけに殺風景だったから不思議に思ってしまう。  あれ? って首を傾げた。  あ、そっか……今、みんな撮影に行っちゃってるのかな?  と思いながら自分を納得させて楽屋の中に入ると、机に伏せて寝ている彼を発見した。  …………疲れてるの?  僕は彼の近くに寄ってみた。  「起きてよーっ!」  わざと声をかけるけど、彼は起きることなく、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。  なんだか幸せそうだな。  …………ほんと、幸せそう。  彼と孝也が"そういう関係"なのに最初に気づいた時は、そりゃ、かなりのショックがあった。  だって、僕は彼か好きだったから。  あれだけ弄っても、どれだけ厭味を言っても、何故か大好きだった。  大好き……いや、愛してたんだ。  なのに、彼に一番近かった存在に奪われてしまったんだ。  近すぎて気づかなかった真実。  普通にしてたら気づかなかっただろうけど、僕はすぐに気づいてしまった。  なるほどね、これが"恋人"なんだって。 黙って頭を撫でると、ふにゃっと笑顔が歪む。  勘違いでもちょっと嬉しい。  入った時から一目惚れだったけど、孝也はもっと前から好きだったんだろうな……彼のこと。  愛してた、愛してるんだよ。  気づけば涙が溢れていて、ぼろぼろと流していた。  切ないよ、切なくって……叶わないんだよね、どれだけ願ったってさ。  切ないよ、切なくって……叶わないんだよね、どれだけ願ったってさ。  だから悲しくなるんだよ。  ……ねぇ、今だけならいいよね。  僕は彼の頬に優しく、触れる程度のキスを落とした。  唇は孝也のだから。  「…………ごめんね」  僕はそう呟いて楽屋を出て行った。  それでも、それでもやっぱり、  彼が大好きなんだ……―――
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