5 招待状≒挑戦状

70/70
2795人が本棚に入れています
本棚に追加
/1362ページ
直視するのも憚られる現実ではあるが、これが生者と使者の壁であった。 だが……それでも二人とも生者であれば……。 谷口さんは、その考えに至った上で砂田さんにこう言っているのだ。 例え今は二人の間に壁が立ちはだかっていたとしても……またいつか、その壁を越えられる時を信じて……。 そして谷口さんがそんな気持ちで居る以上、砂田さんがそれに応えるのは至極当然の事だったのかもしれない。 彼は例え触れる事が叶わずとも、涙ながらに谷口さんを抱き締める。 そしてそれこそが、彼女の思いが砂田さんに伝わった瞬間でもあった。 「約束する……。俺……絶対に来世でも、美香を見付け出すから……」 その言葉を受け、谷口さんの瞳に浮かんでいた涙も頬から滑り落ちる。 それを見届けた峰無さんは、どこか満足気に口を開いた。 「どうやら……犯人については教える必要も無さそうだね。君達はただ、僕らに全てを任せていてくれればいい」 言うや否や峰無さんは踵を返し、部屋の外へと向かう。 そして砂田さんと谷口さんの視線をその背で受け止めつつ、力強く言い放つのだった。 「行こう。ワトスン君、レストレード君。復讐なんて血生臭い事は、僕らの役目だ。必ず犯人を、刑務所にぶち込んでやろうじゃないか」 峰無さんのその言葉に、私と熊崎さんの口元からは笑みが溢れる。 そして私達二人は、無言で峰無さんの後に続くのだった。 この直後、モリアーティからの刺客が訪れる事など、知る由も無く……。  
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!