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実験室を出た後、一人の研究者が彼をケージへと誘導するために前を進み初めたが、後ろに足音が続かない事に気付き振り返った。
すると、セラフィが何故か顔を伏せて動こうとしない。
「おい」
様子がおかしいと判断した研究者がその腕を掴んだ。
首から下げているカードが揺れ、『共和国』の紋章がセラフィの目に写る。
『――大人は殺せ。一人残らずな』
その瞬間、名前も思い出せない、でも大切だったはずの誰かが目の前で『共和国』の兵士に銃殺される光景がフラッシュ・バックした。
「…………が」
吹き出る血、傾いていく身体、撃たれた瞬間で固まったままの表情。
――ユルサナイ
今までに感じたことも無いような真っ黒な感情――「憎しみ」がセラフィの心を満たした。
「?」
小刻みに震えながら何かを呟いたセラフィに研究者が怪訝な表情で覗き込んだ瞬間。
「お………が」
「何だって?」
「おまえたちが!!」
叫ぶと同時に掴まれた手を振り払う。
研究者は手を放さなかった。
この場合、「放せなかった」と言えるかもしれない。
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