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「はい、あーーん」  これほど残酷な『あーーん』があるだろうか。  逃げ場はなくなり、玉子焼きとの距離は、わずか15センチ。  もうダメだ――そう悟ると、なんだかキリストが左の頬を差し出した理由がわかった気がした。  僕は心の中で両手をあげ、口をあける。 「あ、あーん……」  そして、玉子焼きは僕の口の中へ。  すると、玉子焼きは一個の爆弾と化し、体内から身を切り裂くような痛みを全身に弾けさせる――ことは、なかった。
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