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ビリ。ビリ、ビリビリ。『ずっと前から』紙の端をつまんで、錬一はピンク色のその手紙を引き裂いた。『優しい笑顔が素敵で』まるで汚物を見るような顔で、『錬一くんのことが』何度も何度も執拗なまでに引きちぎる。『わたしは』ちぎるともうその紙に興味はなくなったようで、錬一は木箱からまた違う封筒を取り出すと、『たぶん世界でいちばん』その手紙を最後まで読まずにビリビリにした。『好きです』ねえこれ捨てといて、とまだ大量の手紙が残る木箱を、後ろに立つ雅人に向けて放り投げる。
甘い言葉たちが散りばめられた手紙の残骸の中で、錬一はアハハ、と短くわらった。
「本当、バカばーーーっか」
つっまんねえの、と床に放られた木箱を蹴る。
「……錬一様」
「早くこれ持っていってよ」
雅人は聞こえないようにため息を吐くと、飛行機のおもちゃや腐った生花、ラジカセ、ドルチェ&ガッバーナの時計、封の切られていない大量のチョコレート、機関車のレール、テディベア、アルマーニの靴、色とりどりのジェリービーンズ、ヘッドフォン、ばらばらのラブレター、DS、その他たくさんの中に既に埋まりかけている木箱を取り出し、「朝食の準備ができています」と錬一の背中に言った。
「いらない」
錬一は短く返すと、ベッドに乗り上げて『優しい笑顔』で雅人を見た。
「お前も、兄貴に愛してるとか言われちゃうわけ?」
「……」
「だったら最高に気持ち悪いね」
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