ご機嫌な暴君

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    四角い部屋は錬一への贈り物で腐海と化していた。雅人が幼い頃足を踏み入れたときの、あのまっしろい部屋の面影はどこにもない。   閉じ籠るようになってからというもの、彼は憑かれたように、生まれてから今までの間に自分に贈られてきた数えきれない数のプレゼントたちを日に1つ必ず開け、そしてそれを破壊する。     そうすることで、錬一がなんとか精神を保っているように、雅人には見えた。 自分の容姿や、財力や、世間体を肯定する、親戚の叔父さんや、父親や、学生時代のクラスメイトや、女性からのたくさんのプレゼントを否定することが、彼の精神安定剤なのだと。   「雅人」     俺のこと好き?と、錬一が馬鹿にしたように雅人を見る。雅人は内心、この人は一生愛を信じないのだろうという諦観した気持ちで、「いえ」と笑った。     「ふふっ」     錬一は肩を揺らして面白そうにベッドの上でゴロゴロ寝転がり、「だから俺はお前が好きなんだ」と、雅人の手を引き寄せて、雅人の輪郭に指を這わせながら言った。雅人は今度は無表情に、「セックスの途中でしたので、京様の自室にもどっても構いませんか」と錬一の指を好きにさせてやりながら、自分は窓の遠くを見つめて言う。錬一は少し黙ると、それからまたあの人当たりのよい笑顔で、「やだよ」と雅人の頬をなぶった。     「……」   今日は機嫌がいいらしい。 いつもならこう言えば拗ねて自分を部屋から追い出すのに、と雅人は心の中でまたため息を吐いた。      
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