ご機嫌な暴君

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    今日はいずみにとってごくありふれた日常の1ページとなる筈だった。朝食、持ち場の掃除を済ませて、昼食、洗濯、当番会議、そして夕食の準備。しかし、いずみは今夕食の準備には参加せずここで謎の対面を迎えている。   彼にとって完全なる『非日常』の幕開けである。   この先続くその非日常がどれほど長く険しい道のりか、そこにどれほどの悪魔が棲んでいるのか、いずみはまだ知らない。     「錬一のことは知っているかな」   紅茶を啜りながらいずみを優しい瞳で捉える京に、いずみは恐縮しながら頷いて応えた。もちろん知ってます、そう言おうと口を開いたが、思った以上に口内は乾ききっていて、漏れたのは「あ、はい」という気の抜けた返事だけだった。   もう一度、話してみたい。 もう一度、触れてみたい。   焦がれる気持ちに押されて、もう三年も顔すら見ていない錬一のことを思い浮かべながら、いずみはなんとか声の調子を整えた。   「錬一様がどうかされたんでしょうか?」   そんないずみに、京はどこか歯切れが悪い様子で、「ああ、うん」と苦笑いをする。     「実は……」                
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