或いは世界の終わり

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    「はあ……」   誰もいないだだっ広い裏庭で、ほうき片手にため息を吐いた。   プリーツスカートが揺れている。フリルが首元で踊っている。黒髪がたゆたっている。そんな秋風の中に立っていると、どうしてだか、世界にひとりぼっちのような気がした。少し寒くて、掃除の天敵である落ち葉が止まることなく降り続けていた。     来る日も来る日も雑用に追われ続けたせいか、このスカートにも慣れてしまった自分がいる。   両親は幼い頃に死んだ。交通事故で即死だった。そのとき自分は幼かったし、いつでも兄の後ろに隠れていたから、あまり当時の記憶がない。ただ、「いってきます」と言ったきり帰ってこない二人を、不思議に思ったのは覚えている。それでわざわざ、自分とどんな関係かも忘れた、本当にほんの少し血縁があるだけの、この広い豪邸に住むオヤジが、なんの身寄りもない子どもの自分と兄を引き取ってくれたのだ。   以来、双葉 いずみは恩返しとして、高校生活返上で『メイド』として毎日働いている。   れっきとした男である自分たち兄弟が、なぜメイドをしなければいけないのか、それは定かでない。いずみは、多分おっちゃんの趣味なんだろうなあ、ぐらいに受け止めている。なんであっても従うしかないので、文句を言ったことはない。    
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