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遠くから、機械音が聞こえてくる。
私は瞼を閉じたまま、手で音のする方を探り、通話ボタンを押した。
「ちょっと!愛理!!」
電話から聞こえてきたのは朝から元気のいい由衣の声と、子供の鳴き声。
一旦「ちょっと待って」と、後ろに居るであろう秋人に向かって子供を頼むと叫ぶ由衣がなんだか大変そうなのに、楽しそうな声に聞こえるのは気のせいかな。
「由衣?朝からどうしたの?」
「あんたまだ寝てたの?!それより、小説みてみなさいよ!!」
「え?」
「更新されてるの!」
由衣の大きな声で完全に目を覚ましてしまった私はベッドから起き上がった。
「そりゃ、私昨日書いたからね」
「そうじゃなくて!とにかく、さっさと読んでみなさいよ」
「あ、ちょっ、由衣?!」
電話は一方的に切れてしまった。
何がなんだか分からず、とりあえず起きようと、隣を見ると、居るはずの彼がそこには居なかった。
「あ、そういえば、会場の前に寄る所があるから今日は先に出るって言ってたっけ?」
私は携帯の時計を確認し、まだ家を出発するまで時間に余裕があるので由衣に言われた通り、パソコンで小説を確認した。
「何、これ?」
どう見ても、私が書いたページ数よりも多くなっていて、昨日書いた最後のページが全く違うものに変わっていた。
「ちょっ、どういうこと?」
私は訳が分からず、とりあえず、最初から物語を読んでみる事にした。
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