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あれから時間ギリギリまで小説を読んだ。 そこには、私が描いていなかった先生の気持ちが綴られていて、よりいっそう彼への思いが膨らんでいく。 「まったく、勝手な事してくれるんだから」 家を出た私は今、都内のある場所で鏡の前に座っている。 「ん、何か言った?」 「いえ、なんでもないです」 私の髪をセットしてくれている翠さんが、ニコニコしながら、私に話しかけてくる。 「それにしても、いよいよって感じだよね。愛理ちゃんすっごく綺麗」 「いえ、そんなことないですよ。翠さんの腕がいいからですよ」 「また、お世辞がうまくなっちゃって。それより、あいつこんな綺麗な愛理ちゃんを見たら気絶しちゃうんじゃないかな。うん。我ながら上出来!」 どうやら完成したらしく、私を見て自画自賛している翠さん。 すると、ドアをノックする音が聞こえてきたので、どうぞと返事した。 「愛理ー!入るよ」 「あ、由衣」 「由衣ちゃん久しぶり」 由衣が私を見て、固まったと思ったら思いっきり突進し、抱きついてくる。 「すごい!愛理綺麗!!」 「ありがとう由衣」 「それじゃ、愛理ちゃん。私は先に会場に行ってるわね」 「はい!ありがとうございました」 「どういたしまして」と言いながら翠さんが部屋を出て行く。 「愛理、ちゃんと小説読んだ?」 「……うん」 「ほんと、愛されてるって感じだよね君は」 そういって私の頬をつねる。 「ゆ、ゆい。化粧崩れる」 「あ、ごめんごめん。なんかさ、あれ見てますます羨ましくなっちゃった」 「ふふ、私も幸せ感じた」 「愛理」 先ほどまで笑顔だった由衣が真剣なまなざしを向けてくる。 「何?」 「結婚、おめでとう」 そう、私は今日名前が変える。 「ありがとう、由衣」 これから、大切な人たちに見守られながら、私と先生の結婚式が行われるんだ。
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