罪と咎の果てに

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何もない路地裏。   彼を刺した時の感触は、今でも忘れられない。   『何か』を刺した感覚。   脈動。   生暖かい血。   手に残る鈍い感触。   全てが僕を昂ぶらせた。     痛い痛いと健児が叫ぶ。 やっぱり、やめてくれと。 恐怖に歪むその顔は、僕の心をより刺激した。   僕はやめなかった。   今更、この昂ぶりを鎮めることなんてできなかった。   しかも、やめたところで、健児が助かる可能性はない。 医者じゃなくとも、健児の出血の量を見れば明らかだ。    たとえ助かったとしても、僕は親友を殺めようとした、『咎』で豚箱行きは確実だ。
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