第壱章 「始まりの音」

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「…とまぁ、お前の提案のせいで俺達は危機的状況なんだけど?」 整えられた短めの黒髪に、眼鏡を掛けた知的な青年が言う。 彼は山下良樹(ヤマシタ ヨシキ)。 生徒会副会長を務める優等生で、智久と裕太とは小学校からの悪友である。 時は3月、場所は北国。 春が迫る時期と言えど、気温は氷点下。 更に山特有である天候の移り変わりで、吹雪までが襲い掛かっていた。 「だから悪かったって!!んでも、目的地まで直ぐだから」 裕太が謝罪に合わせ弁明するが、一同は冷たい眼差しを送る。 因みに、この旅行?に参加したのはクラスの1/4程度で、殆どが欠席。 理由は一概に、 「そんな事したくない」 だった。 「この地図によると…?あれ!?地図が無い!!」 リュックにしまっておいた筈の地図が見当たらず、裕太は慌てて荷物を漁る。 しかし、いくら探しても地図は出てこなかった。 「…どこにも無い」 裕太は力無く呟き、一同は暫く、何も出来ずに見つめるしかなかった。
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