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赤と黒の中で
あの、夏の日。
むせかえるような、
気だるい空気の中で、
俺は夜空を見上げていた。
俺を包んでいる空気は、
全てを物語っていた。
辺りを漂う、鉄の臭いも。
手にこびりついた、赤も。
ただ、ひたすらに、
冷酷なまでに、
俺に現実を知覚させていた。
わかるのは、今、
目の前で、幾つもの命が
失われたこと。
俺の手の中で、
今、この瞬間に、
命の灯が消えていくこと。
それだけだった。
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