449人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
津久田が私の視線を追って振り返る。
「誰かいた?」
「…3階って、3年生だっけ」
「そのはずだけど。なんで?」
「秘密」
ポケットに栞があることを確認して、津久田と別れた。
彼女の情報が増えたことに、微かな達成感を覚える。
明日はちゃんと返そう。
今日の授業は集中できた。
***
翌日の昼休み、やっぱり彼女は図書室にいた。
昨日と同じ席で昨日と同じ本を広げ、パラパラとページをめくっていた。
昨日読んだページを探しているのかもしれない。
「先輩」
私が声をかけると、彼女は顔を上げた。
眼鏡の奥の瞳がみるみる丸くなっていく。
「…私…ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!