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「うん。俺、もっとちゃんと陸上やりたかったから」
「陸上」という言葉がちくりと胸に刺さる。
「そうなんだ。がんばって」
「ああ」
津久田は小さく息を吐いて、校舎館へ歩き出した。
若干胸が苦しいのを感じつつ、その後ろを歩いた。
「なあ、美菜子」
「何?」
「陸上、止めてよかったろ?」
津久田はまっすぐ前を見たまま、そう呟いた。
「…うん」
涙が出そうになるのを堪えた。
津久田のこういうところが好きだった。
とても。
「そうか。よかったな」
私の頭をぽんと叩いて、津久田は笑った。
「はは。泣きそう」
「誰のせいよ」
「陸上バカな美菜子と、そんな美菜子が好きな俺のせいかな」
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