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「何言ってんの。馬鹿?」
胸がじりじり焼けるようで、何も言えなくなる。
津久田も同じだったのか、教室に着くまで、お互い何も話さなかった。
「じゃあな」
そう言って手を振ると、津久田は教室に入っていった。
「うん」
私も手を振り返し、2年4組の教室に入る。
津久田と違うクラスでよかった。
席に着くと、すぐに授業が始まった。
津久田の言葉が頭から離れなくて、全然集中できない。
――陸上、辞めてよかったろ?
津久田はいつも、私が欲しい言葉をくれる。
だから辛い。
ふと、ポケットに違和感を感じて手を差し入れると、さらさらとした紙の感触がした。
昼休みに拾った、あの栞だった。
細長いピンク色の紙に、桜の形をしたパンチが空けてある。
裏には小さく文字が書かれていた。
【柘植へ どうか私を忘れないで】
「タクショク…?」
最初の2文字が読めない。
おそらく苗字か名前なのだろうが、見当がつかない。
でも、なんだか他の人に聞くのは躊躇われた。
この栞を落としたのはあの女子生徒で間違いないはずだ。
この文字は、きっと彼女への言伝なんだろう。
持ち主の手掛かりは、タクショク、三編み、眼鏡、小柄、
図書室…。
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