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*** 翌日の昼休み、私は図書室を訪れた。 昨日拾った栞を持って。 重い図書室のドアを押し開けると、中はしんと静まり返っていた。 時々、ページをめくる紙の擦れる音がする。 ドアの近くの席には誰もいなかった。 更に奥に進むと、本を読む生徒の姿が疎らだが確認できた。 その中に、彼女はいた。 窓際の席にひっそりと、灰色の重たい光を背負って。 膝に置いた分厚い本に両手を添えて、たまに眼鏡を指で押し上げる。 周りは話をしたり、クスクス笑いあったりしている中で、彼女だけ異彩を放っていた。 まっすぐ伸ばされた背筋が綺麗で、ずっと見ていたいと思う。 丁寧に結われた三編みが、冷房の風に揺れていた。 手の中で紙が歪む音がして我に返る。 栞は私の手中で折れてしまっていた。
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