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「あーあ…」 栞をスカートのポケットに滑り込ませ、再び彼女を見ると、まだ本に目を落としていた。 やっぱり綺麗な風景だと思った。 私が話しかけて、読むのを止めてしまうのが嫌だった。 栞は明日渡せばいい。 私は棚に寄り掛かり、しばらく彼女が本を読むのを見ていた。 予鈴が鳴ると、彼女は本を閉じた。 静かな図書室では、そんな音さえよく響いた。 栞がなくて、困っただろうか。 彼女が出るより先に、図書室を出た。 後ろから静かな足音と、視線を感じる。 あくまで私は振り返らずに、教室に向かった。 「美菜子!」 教室に入る直前、津久田の声がして振り向く。 手を振る津久田の向こうに彼女の姿が見えた。 目が合った気がするけれど、眼鏡のせいでよくわからなかった。 彼女は更に階段を昇り、3階へ消えていった。 「二日連続なんて奇遇だね」 「あぁ、うん」
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