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練習でも大会でも、私の代わりに先輩が走った。 私が入院している間に先輩は私のタイムを越えた。 日毎に伸びていた私のタイムは、もう過去のもの。 走らせてもらえないのだから、私には追い越せるはずもなかった。 あんなに楽しかった部活が、わずか一週間で苦痛になった。 無理を言って走った。 自分だけ置いて行かれるのが怖かった。 何度も捻挫を繰り返す私に、津久田は「諦めろ」と言ったけれど、聞かなかった。 自分でも無理だとわかっていた。 それなのに、どうしてももう1度、走りたかった。 津久田と別れたのは事故から2ヶ月後。 些細な口論だった。 最後に津久田は「無理するな」と言った。 飽くまで私を心配してくれる津久田が愛しくて、大好きだったその胸を叩いて泣いた。 そしてまもなく、部活を辞めた。
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