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「え?いやー、なんか良い酵母が採れるかなーって思って」
そう言って彼は、ブドウが入ったガラス瓶を見つめながら、今日の入道雲みたいに真っ白な歯を覗かせて、屈託なく笑った。
…いや、「なんか良い酵母採れるかなー」じゃなくて!
そう。この人は、私がせっかく食べてもらおうと思って持ってきたブドウを、何を血迷ったのか、自分の口ではなく、ガラス瓶の口に放り込み、変な液体に浸かったブドウを見ながら、にこにこと微笑んでいるのだ。
更には、私の母親が丹精込めて育てたブドウから、菌を分離するとか言い出す始末だ。
この光景を母が見たら、怒り狂って卒倒するに違いなかった。
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