プロローグ―――聖帝人

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 僕達は恐らくは生まれてきただろう、その時から独りだった。 気が付けば独りだった。 恐らくはというのは、僕達が生まれる、つまり今あるこの世界に僕達自身が存在するにあたって、その経緯が今もって不明だからである。 よってこの場合、つまりのところここで『生まれてきた』という言葉を自分達が現れ存在する事の意義、若しくは定義として扱う事は実際あまり適当ではないのだ。 もちろん言うまでもなくその理由は簡単なものだ。 『生まれる』というのは、何らかの、例えば有形、無形に問わず、全くの『無』の中に何が出現する事だ。 しかし、そこには何らかの根本的な『原因』が存在するはず... だからこそ、生まれてくる、若しくは生まれてきた...... では、一体何からだろうか、という単純にして難解な問い掛けがそこに残されてしまうのだ。 草木や花も、水も火も、動物でさえ、そこには何らかの存在意義があり理由がある。 全ては『無』の状態から『生まれてきた』に違いはない。 ただ、その過程が不明なだけなのだ。 僕達にも当然の摂理であると思えるのだが、 実のところ僕達自身が無なのか...それとも...。 一体、僕達はどこからやって来たのだろうか...。
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