memory

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 私はテレビを見つめている。  繰り返されるホームビデオ。そこに映る同じ映像。  私は病院にいて、ベッドに横たわる父の右手にしがみつき、幸せそうな顔をして眠っている。  これを撮影しているのは私の母だ。このビデオはもう何十回も見ているが、恐らく私の人生で最も幸せな瞬間だっただろう。  そりゃ、今が楽しくないわけじゃない。ただ、両親がいて、楽しく過ごせた素晴らしい日々だったと思う。  2418年5月18日。佐久夜坂病院。当時の私は三歳だった。  そして今日。2424年8月2日。私は死んだ。
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