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くしゃみのような音がしたのは、この荷車だったと思う。なんだか妙に気になってしまい、被せてある布をゆっくりとめくりあげる。
「……わっ!」
中には一目では分からなかったが、人が入っていたように見えた。年はそこまでとっていない、若々しい顔をしていた気がする。だが、暗かったので性別は分からなかった。
「おい、そこの者!」
突然、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこには鎧を着た長身の男が五人ほどやって来た。かなり焦っているような表情で、その目は血走っていた。
「怪しい奴だな。名を名乗れ!」
初対面の人物に対してこの態度は失礼ではないかと、イェグ=ハは心の底に激情を抑えながら名乗った。
「見ない顔だな。どこから来たのだ?」
これには彼も少し困ってしまった。真実を言えばいいのだろうが、この星の地理について彼はいまいち知らないのだ。分かっていることは、彼に依頼をしてきた女性が日本人だということと、自分がその日本人とは明らかに異なった姿をしていることだけだ。まさか宇宙から来たと言っても、信じてはくれまい。
「どうした?答えられないのか?」
だんだんと気まずい雰囲気になってきてしまった。
「おい、何してるんだ?」
また別の男がやってきた。その人物は今までイェグ=ハに尋問していた人物とは異なり、髭を生やした中年男性だった。どこか礼儀をわきまえているような印象を受けた。
「我々はもっと重要な任務があるだろう。ああ旅のお方、済まぬがここで少女を見なかったか?」
イェグ=ハは彼の紳士的な態度に感激した。
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