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「女の子……ですか?」
こちらも丁寧な口調で訊ねた。中年男性は悟ったように言った。
「聞き返すということは、見ておられないのでしょうな。失礼いたした。おい、行くぞ」
男は部下と思われる男たちを引き連れて、どこかへ行ってしまった。
「……もう出てきても大丈夫だよ」
「……うん」
誰に言うとなく呟くと、荷車の中からひょっこりと、先ほどの人物が現れた。出てきてから分かったが、その可憐な容姿と高い声から女性であると実感した。
「僕はイェグ=ハ。よろしく」
手を差しのべ、握手をしようとする。
「私は……イル!よろしく」
彼女は快く、手を握り返してきてくれた。
「変わった名前だね」
微笑みながら、イェグ=ハが言った。
「お互いにね」
イルは微笑み返してくれた。
「追われてるの?」
イェグ=ハが訊ねると、イルは黙って下を向いてしまった。それがなんだか寂しそうで、気がつけばイェグ=ハは、彼女の手を握り走り出していた。
目指すのは人が多く、なるべく目立たない場所だ。もとから上半身裸である自分が目立たない場所などあまりないが、適当に歩き回ってみよう。
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