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肌が凍りそうになるような寒さ。
今日は12月25日。
クリスマスという大イベントに街が踊っているけれど、私達は違う。
「今日で5年なんだよね…。
長かったようで、過ぎてみればあっという間だったね」
美雪の薄い茶色の瞳は、どこか寂しげだった。
「ねぇ、裕也君。
追いかけるのは、今からでも遅くないよね…?」
静かな霊園の真ん中で美雪は墓標に話し続けた。
「今までずっと裕也君のこと、忘れなかったよ?
ずっと想い続けてきたんだよ?」
茶色のそれは、微かに潤んでいた。
「もう叶わないって分かってたけど…。
ずっと好きだったんだから…」
そう言った美雪の瞳からは涙が溢れていた。
「私には裕也君が必要なんだよ…。
だから、ずっと側に居させてくれないかな…?」
最後にそう言い残し、美雪はその場から立ち去った。
涙は雪の上に落ち、わずかな結晶を溶かした。
「だから…今から行くね…」
クリスマスの夜、階段を昇って天に近づいていく女性をあなたは見つけられましたか…?
fin...
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