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「俺は鈴木正一!しょういち・ね!しょうくんでいいや。出来れば名字は桜井にしたかったけど…、いや、ビジュアルじゃ負けてねぇからいいや。下の店のマスターだ。雇われだけどね。よろしく!」
笑顔で握手を求めるように右手を少年の前に差し出す。そして
「君は?何て呼べばいい?」
…君の名は?じゃないんだ…。
何だか少しだけくすぐったくなり、少年は口を開いた。
「…和也です。」
正一の差し出した手には触れずに、それだけ呟くとまた目を伏せた。
気まずそうに出した手を引っ込めると「かずや…か。かずなり、だったら嵐そろっちゃうかもな」とかなんとか呟いた正一。
少し間があいて…。
「よし!何か食おう!もう朝の7時過ぎた。俺、夕べも何も食ってないんだよ。和也も腹減ったろ?」
正一は自分の膝をポンと叩くと、勢いよく立ち上がった。
正一の思いがけない言葉に「え?」と、とまどい、キッチンに向かうその姿を目で追った。
…何も聞かないのかな…。聞かれても困るけど…。俺の体…見たんだよね…。
何も出来ずに、ただただ和也は正一を目で追っていた。
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