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走り続けた足も、そろそろ限界が近づいていた。寒さでもう手足の感覚すらない。
少年は足を止め、比較的目立たない、小さめの建物の壁に、その疲れた体をもたれかけ、凍えた指先に小さく息をはきかけた。走り出してから、初めての休息だった。
不意に、寄りかかる壁の先にある、緑色のドアが開いた。中から出てきたのは自分より少し背の高い、そんなに年の変わらないであろう、青年。白いシャツに黒いエプロンをかけ、ドアのすぐそばにあるお店のメニューらしきボードを片付けるところだった。
エプロン姿を見て、少年はここが小さな喫茶店であることに気が付いた。
そしてそのお店の人らしき青年と目が合う。
…こんなカッコじゃ、怪しまれるよな…。
声を掛けられるのを恐れ、まだ疲れが残るその足を再び動かそうと壁から背中を離したその瞬間。
肩を軽く掴まれた。
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