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誰とも関わるつもりはなかった。誰かに助けてもらいたいなんて、少しも思っていない。
だけど…
軽くかけられた肩の上のその手は何となく温かく、振り向いた先にあったエプロン姿の彼の笑顔が、凍りかけた少年の心をやわらかく揺り動かした。
エプロンの彼は、持っていたメニューの看板を少年の目線まで持ち上げ、一つのメニューを指差した。
~雨の日サービス~
・カフェオレ 200円
…メニューから目を外し、エプロンの彼を見る。彼は何も言わず、ニコニコと優しく微笑むだけだった。
…俺に勧めてるのかな…?確かに手足はかじかみ、もう痛みすら感じない。一瞬でいいから温まることができたら、どんなに楽かな…。
不意にズボンのポケットに手を入れる。確か、小銭があったはず…ジャラジャラと音をかき混ぜ、手に取った小銭を見ると確かにそこには240円、冷たく光っていた。
…どうしようか…。
迷っていると、エプロンの彼はニッコリ微笑み、緑色のドアをゆっくりと開け、少年を中へと招き入れた。
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