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…夢を見た。
優しくて綺麗な母さんの笑顔。ストレートのロングヘアーをなびかせ、くるりと背を向ける。
…待って…!待ってよ!僕を置いて行かないで!
フッと視界が暗くなる。
目の前にいたのは…。鬼…。眼鏡の奥の目をぎらつかせ、鼻の下の白髪まじりのひげをグニャリと曲げて、口角をあげる。
…嫌だ…!来ないで…。お願いだからもうやめて!
…助けて!
…誰か…誰か!
…助けて!!
「お~い。大丈夫か~?」
気の抜けた男の声で、少年は目を覚ます。ハッと驚いたように身を素早く起こし、周りを見渡した。
見たこともない部屋、奥には二つの扉があり、1つはバスルームらしきタグがかけられている。その手前には小さなカウンターキッチンがあり、部屋の中央には座り心地が良さそうなソファーと、硝子製のテーブルが置かれていた。
そして、目の前にはくるくるヘアーで目の大きな男が心配そうな表情でこちらを見ている。
「安心しろよ。ここは俺の部屋。…つっても、店の二階を借りて改造しただけなんだけどな。」
何とも言えない、愛くるしい表情で、男は話す。
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