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「お前さあ~、店で寝ちゃってたんだよ~。すっごく疲れてたみたいでさ、何度か起こしたんだけど全然起きなくてさ~。仕方ないから部屋に運んだわけよ。あ、もちろん1人じゃ無理だから、圭人に手伝ってもらったんだけどな。あ、圭人ってのは、ここに住み込みで働いているバイト君。今は奥で寝てるよ。」
そう言って、奥の扉を指差した。
ふと…少年は目をふせて、自分が見たことのないトレーナーを着ている事に気付き、胸元に触れた。
「…ああ。君、濡れてたから、風邪ひくと思って着替えさせたんだ。勝手に悪かったな…。」
少年は自分が座っているベットに目を落とし、少し考えてから口をひらいた。
「…ありがとうございます。すみませんでした、ご迷惑おかけして…。」
振り絞るように出したその声をきいて、目の前の男は大きな目をさらに見開き、嬉しそうに言った。
「なーんだよ~!お前しゃべれんじゃん!!俺、お前も圭人みたく耳が不自由なのかと思ってたぜ~。」
そして、くるくるの髪をくしゃくしゃと触りながら、いたずらっ子のように笑った。
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