エル

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神は、混沌からすべてを創り出した。 大いなる神、全能の神。動物、植物、すべてのものが神を崇めた。 神は、自分の手伝い役に、まずは二人の天使を創った。 光から生まれた二人。 最初に生まれた天使の名はサマエル。十二枚の羽を持った、神に一番最初に祝福された生き物だった。 次に生まれたのがミカエル。彼は羽根を六枚しか持たず、サマエルの予備として生まれていた。だから、ミカエルはサマエルが羨ましく、妬ましくもあった。だが、それ以上にサマエルを尊敬していた。 だから。 「サマエル。御神の右に座ることを許された大いなる天使よ。なぜ、反逆を」 「お前には分かるまい。私は、いや、俺は神の上を行く」 サマエルは神に反逆をした。 それを止めるよう命じられたミカエルは、涙を流しながら戦ったと言う。 やがて、長い戦争は終わりを迎え、サマエルは地に落ち、真名を名乗ることを許されず、ルシファーとして生きていかねばならなくなった。彼はルシファーとして、地獄の、悪魔たちの王となった。 彼をみな、敬意を込めてこう呼んだ。 大いなるサタン、堕天使ルシファー。 「素敵な童話じゃないか」 「ですが、ルシファー様が悪役として語り継がれてしまっています」 「あの方がそう望んだから。俺は別に気にしてないし」 「他のものが気にします」 「その事実を知っているのも上層部だけだし、気にしているのもその上層部の一部だけだろ」 「ですが……」 「俺は、あの方から直接お言葉を頂いたんだ。だから、いいのさ」 .
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