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5月10日
この日は明暗に入って初めてのノックの日だった。
守備は決して得意じゃない。
だが肩力には自信がある。
緊張は全くしない。
ただ全力でプレーをするだけだ。
カァーン!
緩い打球が青い空と白い雲に重なる。
俺はバットに当たった時の角度、金属音、そして打球の緩さから落下地点を予想し、その場所に全力でダッシュ。
打球は予想の場所に着くまで決して見ない。
約10m走った頃に打球を見る。
予想はドンピシャ。
後ろから少し助走をつけて打球をキャッチ、そして送球。
しっかり低いワンバンで返球した。
「アイツうまいな…」
「そうか?そうでもないやろ?」
「森笠、お前守備巧いなぁ」
俺に話しかけてきたコイツは沢田って奴だ。
軟式上がりでセンターをやっていたらしい。
こんなこと言ってくるが正直沢田の方が巧い。
「お前のが巧いやろ?皮肉にしか聞こえへんで?」
俺は沢田に嫌味のように言い返す。
「ホンマやで。自分メッチャ巧いからって人をおちょくりやがって」
笑いながら沢田をからかうコイツは久住。
ポジションが俺と同じでライトらしい。
シニア時代は四番だったとか。
俺はこの二人と主に仲がいい。
他にもレフトの葛西、今西、センターの小谷などがいるが先にバッティング練習をしている。
一年生でもやはり強豪だけあって能力が高い。
俺はこの中でレギュラーになれるだろうか?
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