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「もう忘れてくれ。
ガキん頃の記憶……」
「そんな簡単に忘れたら、苦労しないもん」
「融通の聞かねー奴」
私の言葉を聞き比呂君は溜め息を吐くとポケットから煙草を取り出しライターで火をつけた。
比呂君にとって只の思い出かもしれない。けど私には子供の頃の記憶程大切な宝物はない。
「どうして急にそんなこと?」
「別に理由は無い。けど見たらわかんだろ。もう昔の俺じゃない、変わったんだ」
「変わったのは外見だけよね?中身は昔と全然…」
「……黙れ」
―ドンッ!!
「きゃっ」
いきなり物凄い力で両腕を掴まれ、気が付くと桜の木へ乱暴に体を押し付けられていた。
目の前には綺麗な顔、だけど氷のように冷たい茶色の瞳が私を至近距離で見下ろしてくる。
背筋にゾクッと寒気が走った。
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