衝撃の再会

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「嫌いなんだ」 「嫌い……?」 「お前見てると苛々する。昔の記憶引き摺って自分は純粋みたいな顔して気持ち悪い」 「気持ち…悪い…」 唇が触れるか触れないかの距離、私は溢れ出す涙を必死で抑え背の高い比呂君を睨み付ける。 「女って泣けば何でも解決すると思ってんのな」 「そんな事、思ってない」 「お前は自分自身に酔いしれてるだけ。下らねぇ感情に、俺を巻き込むんじゃねぇよ」 ―ズルッ 彼のその冷たすぎる言葉に頭が真っ白になり、ズルズルとその場に座り込む。それでも顔色一つ変えない比呂君は、持っていた煙草の灰を桜の木へ押し付ける。 私たちの大切なあの約束の木――…… ポタッポタッ… 泣かない、泣くもんかと思っても涙は自然と溢れ頬を伝い紺色のブレザーを濡らしてゆく。 昔の記憶も涙と共に流れればどんなに楽なんだろう。
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