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――…午前の授業が終わり、
昼休みになっても比呂君が教室に姿を見せる事は無い。
「見て、このネイル。
超可愛くない?駅前に新しくできたサロンでして貰ったんだー」
お弁当を食べていると、美沙が凶器のように鋭くキラキラ光る爪を見せてきた。
「可愛い、可愛い」
「気持ち込もってないんだけど?つか莉衣も少しお洒落しなよ。素がいいんだし絶対可愛くなるから」
「私は別にいいよ」
化粧やお洒落にそれほど興味がないので無視してお弁当の卵焼きを食べようとしたら、顔を真っ赤にした中山君が美沙の元へとやって来た。
「安西さん、良かったらコレ一緒に行きませんか?」
「何?」
「クラシックのチケットです」
瞬間、お箸から卵焼きがポロリとこぼれ落ちる。
美沙がクラシック………
驚いている私を余所に、中山君はチケットを渡し「返事待ってますから」と言って小走りで教室から出て行った。
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