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清々しい目覚め。だったはずの私の1日の始まりは、カーテンの隙間から覗く太陽と、小鳥の囀り。
そして、お母さんの怒鳴り声で幕を開けた。
「んもうっ、莉衣子起きなさいってば!!入学式初日から遅刻するつもりなの!?」
「朝から煩いなぁ……今何時よ」
「何時って、もう7時半!」
「ふーん。まだ7時半…………って嘘!!」
慌ててベッドから飛び降り、寝癖でグシャグシャの髪をブローして、今日から通う桜華高校の制服に着替える。
「……馬鹿娘。入学式の日くらい、余裕もって行けないわけ?」
「仕方ないじゃん。遅刻しないようにって、きっちりセットした目覚まし時計が鳴らないんだもん。文句があるなら仕事をサボって私を追い込んだこのボロ時計に言ってよね」
「言い訳は良いから、早くご飯食べちゃってよ。母さんも準備あるんだからね」
「はいはい。分かってるってば」
慌てて準備する私を、端から見ていたお母さんは、呆れ顔でリビングへ降りて行く。
「よし!忘れ物ないし完璧。あっと、それとコレも」
机の一番上の引き出しから小さい花のついた玩具の指輪を取り出し、ネックレスにして首からひっかけた。
これだけは片時も離さず身に付けているの。私と彼を繋ぐ、世界でたった一つの宝物。
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