891人が本棚に入れています
本棚に追加
「リイ!ぽかんってしてるけど今日から高校生だよ?青春真っ盛りだし恋したいじゃん。一緒に彼氏見つけようよー」
道路の両脇に咲いている桜並木を眺めながら歩いていると、美沙が長い髪をクルクル巻きながら私の顔を覗きこむ。
「………私はいいや」
「えー、何でよ。地味で根暗で目立たなかった日常から脱却しようよ」
「地味で根暗で悪かったわね。それにナンでって、知ってるでしょ。私には好きな人がいるもん。その人以外興味ないし」
「でたよ。また“桜の君”ねー。何年前の昔話?」
「10年前。」
もう聞き飽きたと言わんばかりの表情をする美沙が言う“桜の君”。それは小学生の頃に引っ越してしまった初恋の人、ひろくんのこと。
もう10年近く会ってない彼を思い続ける私を、哀れんだ表情で見てくる。
それでも簡単には忘れられない、大切な人だ。
最初のコメントを投稿しよう!