1、運命

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「瞬!! ハッピーバースデー!」 マネージャーの和泉(いずみ)さんが、運転しながら、腕時計に目をやった。 忘れてた‥ 今日で25か‥ 「なによ~。 今年も忘れてた?」 和泉さんは、俺をスカウトした張本人。 「瞬を見つけたのが21歳の時だから、もう4年目か。」 俺は和泉さんにスカウトされたとき、カフェでバイトしてた。 「しつこい人だったよね?」 「この業界にいて、あんなにビビッてきたのは、後にも先にも初めてだったなぁ~。」 和泉さんは、当時、芸能界で働きだして、10年目。 3ヶ月、毎日お店に通って、同じ話をしていった。 「ストーカーと紙一重だったよなー。」 「でも、私の勘は正しかった。」 そんなストーカー的な和泉さんに負けたのは、和泉さんが、1年でブレイクしなければ、仕事を辞めると言ったから。 そこまで、俺に賭けているというのが、面白そうだった。 読者モデルから始めて、すぐに反響があって、モデルの仕事が増えた。 就活しながら、適当にやっていたけど、大学4年になってすぐに、CMの仕事をやったから、卒業式には行けてない。 で、3年ばかりハードスケジュールが続いてる。 「瞬は私の運命の人だからね!」 「うぜ。笑」 なんか恋人同士みたいな会話だけど、実際、和泉さんには婚約者がいる。 「フフ。 そういえば、碧ちゃんとは復縁はないの?」 3年前、あのCMがきっかけで、1年ほど碧と付き合っていた。 別れて、1年くらい経つ。 うちの事務所は、プライベートに寛大で、碧と付き合い始めた頃は、スケジュールがパンパンだったにも関わらず、何かと時間を作ってくれたりしていた。 「ないない。」 碧とは、今でも仲はいい。ただ、3歳年下なこともあって、なんか妹みたいな感じ。 「去年も今年も寂しいお誕生日だから、未練があるのかと思って。」 「だったら、別れてねぇもん。 しかも、去年も今年も誕生日忘れてるくらいだから、寂しくもないから、ご心配なく!」 また明日、仕事が始まれば、色んな所で色んな人が、祝ってくれるだろうし。
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