ブサイクと王子

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霧生篤彦は 王子様と呼ばれている。 容姿端麗。 成績優秀。 文武両道。 金持野郎。 これだけ揃うと 正直気持ち悪い。 少女マンガか。 背はスラリと高く、 手足も長い。 イメージは細いのに 体つきはがっしりしている。 中間服になった今、 それがハッキリわかる。 髪はさらさらしていて、 シュッとした目を細めて 笑う顔は春の日差しを感じさせる。 当たり前だが ものすごくモテる。 でも、霧生篤彦は 異常なのだ。 皆、見た目とオーラに 騙されているのだ。 霧生篤彦は言った。 「菅原さんって ブサイクですよね。 そんな菅原さんが 大好きだから 付き合ってください」 そう言って私、菅原鈴子に 告白してきた。 やっぱり完璧な人間っていないんだね。 完璧なやつ程、 ネジがぶっとんでいるんだ。 こいつみたいに。 そう思った 高校二年の五月の終わりでした。
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