ブサイクと王子

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「おはようございます。 鈴子さん」 今日も霧生篤彦が薔薇と キラキラオーラを撒き散らしながら私の前に登場する。 「鈴子さん。 おはようございます」 聞こえていないと思ったのか 文を少しだけ替えて もう一度挨拶してくる。 「鈴子さんって呼ばないで」 「鈴ちゃん」 「鈴ちゃんって呼ばないで」 「鈴子」 「黙れ」 霧生篤彦は嬉しそうに 私の隣に並んで歩く。 「俺のことも篤彦って 読んでいいですよ。 あっちゃんとか あっくんでもいいですよ」 「誰が呼ぶか」 イライラさを顔に全開出して 言ってやるが、 霧生篤彦はめげない。 寧ろさらに嬉しそうに笑った。 「もー。 鈴子さんったら そんなブサイクな顔して。 かわいいなあ」 くっきり二重瞼の目。 綺麗な形の目が細められる。 その目の色は我が家の愛猫、 ミケコ(♀)をベタ可愛がりする兄にそっくりだった。
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