ブサイクと王子

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ウチの頭がパーな兄貴と 何か関係があるとか そういう伏線じゃない。 こう、認めてしまうと 少し腹が立つのだが、 つまり、 霧生篤彦は私に紛れもなく好意を抱いているということだ。 冷やかしでもなんでもなく。 冷やかしの方が 楽だったのではないかと思う。 「鈴子さん。 今日のお昼は何ですか?」 「やらんぞ」 「俺のも作ってくださいよ。 お弁当。 早起きして、 目の下にクマ作って、 手は絆創膏だらけで。 ああ……」 神よ感謝します。 といった体の顔の王子様。 うっとり顔の王子様。 「なんてブサイクなんだろう」 「だから…」 春の柔らかな風は 霧生篤彦のために吹いている。 柔らかで香りのいい風は 霧生篤彦のさらさらの髪を 軽く玩び、 陽の光はその紅茶色の髪を 優しく輝かせる。 そして、 王子様的微笑み。 ムカツク。 「ブサイクって言うんじゃない」
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