ブサイクと王子

7/9
前へ
/153ページ
次へ
「宇津木が羨ましい。 俺も鈴子さんの頭を撫でたい」 「なんで?」 「なんで? 鈴子さんの髪、綺麗だろ。 それに、愛しいものは 触れたいじゃないか」 ぞわわ 鳥肌の音が聞こえてくるよう だった。 綺麗? 愛しい? うへえ。 霧生篤彦は真顔で 何か可笑しなことを 言ったかと聞き返す。 宇津木が目に涙を貯めて 小刻みに震えている。 私の立場を憐れんで 泣いているのではなく、 バカにしているのだ。 「そ、そうだな。 プリンス。 間違っちゃ…いない。ぶふっ」 噴き出す宇津木。 唾が飛ぶ。 「だろ?」 理解者を得た嬉しそうな プリンス。 オーマイゴッド。 私は手櫛で髪を直す。 王子様が綺麗と称賛する 手入れが行き届いていない 髪を直す。 宇津木は前方に友人が いるのを発見し、 そちらへ向かう。 王子とカス女イジリは 堪能できたらしい。 去り際に、 「モテて困るな。 プリンセスって呼んでやろうか」 と言うから 「ファックユー」 と親指を下へ向けた。 「イヤーン」 宇津木は楽しそうに 駆けていった。 「鈴子さん… あの…僕にも言ってください」 もじもじする王子様。 勘弁してくれ。 「シャラップ」
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加