ブサイクと王子

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霧生篤彦様は 王子様らしからぬ動作で ガードレールで 尻をぶつけた。 「あ…」 でも、さすがに 起き上がる動作は 王子様だった。 尻を擦ってはいたが、 なぜか優雅に見えた。 「あの… その… 痔になったらゴメン」 「いや。ならないよ」 霧生篤彦がくすくすと笑った。 「破片とか、 大丈夫ですか?」 「……平気」 「そうですか。よかった」 霧生篤彦は、 そのままサラリとした 動作で、私の手を握って来た。 「え。何」 「え。何がですか?」 「いや。手だよ」 「ダメですか?」 ダメですか? 指の腹で、私の手の甲を なぞる。 なんだか官能的な行為。 一瞬、 助けてくれたわけだし…… と考えたが、 いや。それとこれとは 別問題だろ。 と思い直して 握られていない手で 思いっきりシッペを食らわした。 「す、鈴子さん…」 「赤面するな。気持ち悪い」 王子様はどこか嬉しそうだった。 私の耳の熱はもう冷えていた。
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