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「ゥゥウウウウ・・・」 後ろから唸り声が聞こえた。振り返ると熊が起き上がろうとしている姿が目に飛び込んで来た。 「ヤバイ!起きたぞ!」 今度は俺が女の腕を引っ張り先を走る。 そして、どれくらい茂みのなかを走ってきただろうか。結構な距離を走った。 これだけ走ればきっと大丈夫だろう。 「ハァ、ハァ・・・」 どちらにしても、もう走れない。 女も身をかがめ空気を大量に出し入れしている。 前髪が邪魔していて顔はまだよく見えない。 「やるな、お前」 学生時代に部活で鍛えた俺は走ることに自信があった。でもこの女はそのスピードにほぼついてきた。 「学生時代陸上部だったから。短距離専門だったけど」 初めて女と目があった。透き通るような黒い瞳。 5時間前に見つけた赤紫の花と同じように、俺の心はこの女に奪われた。
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